名医ジャスティン 奇跡を起こすセラピードック

この本を手に取ったのは、この「ジャスティン君」が「はなちゃん」と同じ黒柴だからにほかなりません。アメリカ生まれの黒柴、「ジャスティン」は、特別な訓練を受けたセラピードックです。

動物を使ったセラピーについては、テレビ番組でちょっと観た程度の知識しかありませんでした。動物とふれることによって、温かい気持ちになることがセラピーになるんだろうな・・・ぐらいの認識しかなかったのですが、「ジャスティン」の話を読んで全くイメージが変わってしまいました。

犬が自ら仕事としての使命感をもって、様々な問題を抱えた人間に向き合い寄りそうことができるということは驚きでした。

人間にはできない忍耐力と洞察力には尊敬の念を感じました。同じ生きるものとしての愛がそうさせているのでしょうか。人より短い、しかも限られた可能性の一生の中で、なんという懐の広さでしょうか。しかも「ジャスティン」は男の子なんです。

写真の中の「ジャスティン」の遠くを見ているような目は、全てお見通しなのでしょうか。

これまで、数頭のワンコと生活をともにしてきました。いま飼っている「はなちゃん」は家族が調子が悪いとか落ち込んでいるとかいうことを、とても敏感に感じ取ります。それは、家の中で飼っているからだと思っていたのですが、「ジャスティン」の話を読むと、黒柴が特にそういう才能に長けているのかもと思いたくなりました。

認知症が進んで人格として接するのすら困難な人たち、様々な身体の問題を抱え回復の見込みもなく心を閉ざす人たち、介護する方々のご苦労は大変なものです。人のできることは本当に限られていると思いたくもなる。残り少ない人生にほんの一瞬でも、生きているはりや希望を・・・もたらすことができるワンコがいる。そんな可能性にかけて、日々取り組んでおられる関係者の方々の努力が、少しずつ実を結ぶ。「ジャスティンに教えられて」・・・というところが、驚きでした。


ワンコと人間の共存の歴史は長く、たくさんの犬が人間社会に生きていますが、人間はどれだけ、ワンコを幸せにしてこれたでしょうか。

私も、これまで看取ってきたワンコがみんな、幸せな人生だったと思ってくれたか、全く自信がありません。本当に申し訳ないことに、人間は人間の都合のよいようにしか、ワンコにしてあげられないのではないかと。たとえ愛情たっぷりでも、それは人間の押し付けでしかないのかもしれません。


それでも彼らは忠実に、従順に人間とともにあって、人の役にたつことが生きがいにもなるのです。誇らしげなセラピードックたちの姿を思うと、人間は一生身を粉にして、人のために働くべくこの世にあるのだと思えてきます。